11. 効率良く提案書を作成する

仕事にはトラブル(問題)がつきもので、トラブルのない仕事はありえません。これは社会人として新たなスタートをする人にとって容認すべき事実です。大切なことはトラブルが発生した時にできるだけ早く適切に対処してリスクを最小限に抑えることができるかどうかです。それが仕事のできる人の条件だといえるでしょう。

さて「適切に対処する」とはどういうことでしょうか。
それは、トラブルの現状を把握して解決策を具体的に上申することです。
この種の提案書の作成は、例えば、新規事業計画書を作成する時も同様に応用できるので役立ちます。
 
最初に、貴方の頭のなかで計画書の大枠が整理されていなければなりません。
まずは徹底的に現状把握をするステップから始まります。
そうすると問題点の本質や将来の機会や可能性が明確になってきます。
これが次のステップで、最後のステップは、それらの問題点や機会を踏まえて解決策を提案することです。
この「3ステップ」に従って提案書を書き上げます。
建設的な提案書にするために、最初の2ステップは、ステップ毎に主要要因として3つを明示してください。最後の解決策も3つの代替案を提案しますが、その中で貴方の提案を理由を付して明確にしておくことが大切です。
 
(1) 第一ステップ:現状把握を徹底的に実施する。
最初のステップは、現在の状況を徹底的に調査することです。情報が多ければ多いほど事実関係が正確に理解できるので、時間を掛けてできるだけ多くの精確な情報を入手します。

提案書を作成するに必要な時間枠を100%とすると、現状把握には概念的ですが50%の時間を配分します。
この現状把握が最も重要で完璧にできたならば、ほぼ仕事は終わったと言えます。

情報の種類としては3つの領域があり“3C”と言われています。
“3C”はCustomer(市場情報), Company(自社情報), Competitor(競合情報)のそれぞれの頭文字からきています。

ある百貨店から出店を依頼されたケースを例題としてとりあげてみました。

1 市場情報:使用者のプロファイル、入店客の流れ、納入条件など。
2 自社情報:売上ならびに利益状況(店別、月別、製品別、販売員別)、顧客プロファイルなど。
3 競合他社情報:競合ブランド別売上シェア、マーケティングカレンダー、顧客プロファイルなど。
 
(2) 第二ステップ:問題点並びに機会(可能性)を明確にする。
まずは収集した情報を精査し、間違った情報を取り除くために取捨選択の作業をおこないます。そして問題点と機会を抽出します。問題点とは、投下できる企業資源を考慮に入れて問題になると思われる障害物のことです。少なくとも重要度の高い方から3つを列挙し、同様に、機会についても同じ作業をします。このステップの作業に全体の20%の時間を配分します。最初のステップが徹底されていれば、この作業は自然とできるはずです。
 
問題点:
1 顧客層はシニア層が多い。
2 予定されている売り場スペースは十分だがロケーションが良くない。
3 納入条件が悪い。
機会:
1 自社のターゲットである30代の女性客層は着実に増加している。
2 待望であった新製品が間近に導入することができる。この製品は業界においても新製品である。
3 新規導入に関して経済的な援助が百貨店側からもらえる
 
(3) 第三ステップ:提案・解決案として上申する。
最後のプロセスは提案書にまとめることです。この仕事には残りの30%の時間を配分します。提案は常にひとつということはありません。少なくとも3つの代替案を準備し、3案の中から推薦案を明示してその理由を付します。
 
提案:
1 先方からの出店の提案を受ける。​
理由:A支店への出店計画は損益の採算をとるのが難しいが、既存店への影響が予想されるので個別プロジェクトというよりも、全体的な取り組みから判断すべきである。
2 先方からの出店の提案を一部修正し、逆提案をする。但し、それが受け入れられなかった場合は、出店を断る。
理由:納入掛け率と広告費等の更なるバックアップを追加条件に出店を受け入れる。それが可能ならば、店別利益管理面では収支ゼロとなり、当社の全体利益計画に影響を及ぼさない。
3 先方からの出店の提案を拒絶する。
理由:出店依頼のあった店の顧客プロファイルは当社のターゲット層とは異なるので売上予算を達成することは難しい。拒絶しても全体的な関係は損なわれることはないと判断できる
 
以上の3案を検討した結果、2番目の「先方からの出店の提案を一部修正し逆提案をする。もしそれが受け入れられない場合は拒絶する」を提案したい、とします。
 
「3ステップ」で物事を考える方法はいろいろ応用することができます。
例えば、3ステップとして「テーマ探し」「問題解決」「論文草稿」を卒論作成ステップなどに応用することも可能です。
3ステップの内容はケースによって異なりますが、あらかじめ枠組みができていれば効率よく作業が可能になります。
プライベイトでも、なにかを決めようと思ったら、まずは「現状把握」です。
例えば、株価が上がっているからといってすぐに株購入に走らずに、経済的にはどうか、時間的にはどうか、他の代替案はないのか、など現状を十分考えて決定すれば後で後悔することはありません。
どこか旅行にでかける計画があれば、まずは情報収集です。
このように現状を正しく認識するために、徹底した情報収集の活動が必要です。

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