22. PDCAをまわせ

近年、「Made in Japan(日本産)」表示の有無が高品質の評価基準にされています。まるで「Made in Japan」が商標(トレードマーク)のひとつになったようです。現代の日本人にとっては誇るべき「日本製」ですが、昭和40年ごろまではまったく逆で悪名高きマークでした。こんな話しを知っているでしょうか。当時のアメリカへの輸出品のベストがワイシャツだったそうです。アメリカ人が安いので購入し腕を通そうとするとボタンがのり付けになっているので、パサパサと落ちてしまったそうです。いかに日本製が劣悪だったかの証拠でした。その後、品質改善に官民が協力・努力した結果、品質の高さが認められるようになり輸出も増加し現在に至っています。この汚名返上に尽力したのが、アメリカの統計学者だったウィリアム・エドワーズ・デミング博士でした。同氏は日本の経済界に対して良品をつくる運動を提唱し、その際の管理手法のひとつが「ZD運動(ゼロ・ディフェクト)」でした。工場などで不良品をゼロにする運動が実施され、企画部門で導入されたのが「マネジメントサイクル」と呼ばれる「PDCA」でした。

 

「PDCA」とはPlan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Action(行動)の4 段階の頭文字をつなげたものですが、この4ステップを辿ることによって業務内容を改善しました。私も新入社員に時代に、社内会議で事あるごとに「PDCAを廻したか」と上司や先輩から口やかましく言われたものでした。


仕事はまず「計画」からスタートです。計画に基づき実行し、実行したら結果を必ず評価します。そして必要があれば改善策を提案・実行するという一連の流れに沿って仕事を進めます。しかし、アクションで仕事は終了ではありません。アクションを次の計画に反映し、これを繰り返していきます。つまり各ステップはサイクルを描き永遠に終わることがありません。このサイクルを転がしてゆけば業務は改善され、結果として失敗をなくし効率を高めることができるという考え方です。

 

「PDCA」が提唱され半世紀以上たちますが、これは現在でも立派に通用する理論です。仕事をやりっぱなしにせずに、必ず「PDCA」を回すように心掛けてください。なぜならばビジネスにミスは許されないからです。ミスをなくすのがこの運動ですが現実には「PDCA」をキチンと回している会社は少ないようで、ほとんどが「PとD」のみで終わっているのが現状です。その理由としてあげられるのが「忙しいから、時間がないから」です。しかし、仕事を遂行するうえで、「PDCA」は高い優先順位が付されてしかるべきです。

 

誰でも、計画については真剣に時間をかけて立案しますが、実績をつかんだら終わりで、評価することなく新たな計画の企画をスタートしてしまいます。サイクルの中で特に重要なのがチェックで評価なくして、少なくとも仕事は終了ではありません。売上予算が達成したからと打ち上げパーティに走る会社がありますが、チェックとアクションを済ませてからすべきです。実績を評価することにより達成または未達成の理由が明確になり次の予算作成の基礎につながるからです。

 

伝統的な経営管理にマネジメント・システムがあります。それは計画設定、組織編制、動機づけ、そして統制の4つの機能ですが、このシステムも最初のステップが「計画」となっています。仕事においても私事でも、まずは動き出す前に計画を立てるべきです。自分一人でする仕事なら、全てが頭に入っているので計画作業は必要がありません。しかし仕事は他人の応援と協力をもらわねばできません。その為に何をするのか、どこへ向かうのか等々を相互が理解する必要があるからです。そのためには計画を立案し、計画通りに徹底、実施するために「計画書または企画書」を作成しなくてはなりません。計画立案の知識を身に付けることがビジネスの入門です。


明治維新の歴史上の人物を読んでいると盛んに建白書を上司に提出しています。吉田松陰も多くの建白書を書いていました。この建白書は毛利藩主に提出する、いわゆる企画書と同じものです。日本資本主義の父と呼ばれる渋沢栄一も建白魔とも呼ばれるほど書いたそうです。


優秀なビジネスマンの基本条件は企画書を草案できる人です。企画書の作成が不得意だという人がいますが、是非とも企画書を作成する習慣を身に付けてほしいものです。
なにも難しく考えることはありません。基本的には、現状分析、問題点と機会、解決策(提案)の3ステップでまとめ上げればよいのです。

0コメント

  • 1000 / 1000