1631.事例 9:ケーキ屋

目に入れても痛くないお孫さんの誕生日が明日だったKさんは、あいにく明日のお誕生日は会社の出張で、どうしても一緒にお祝いすることができません。会社の帰り、銀座の菓子店に立ち寄り、5千円ほどのバースディケーキがあったので配送してくれるように頼みました。店員がお孫さんの名前を聞くので、“マスミ”と答え、支払を済ませたKさんは、「間違いなく明日の正午までに届けてくれますね」と念を押して、その足で出張先へと向かってしまいました。Kさんは旅先でも、ケーキが予定通り届いてお孫さんが喜んで食べてくれているか心配していました。出張から帰るや否やKさんは、奥さんに「どうだ、時間どおりにケーキが届いたかい」と聞くと、奥さんは感極まった調子で、次のように報告してくれました。

「それがね、あなた、うれしいではありませんか、マスミの誕生日の正午キッカリ、その菓子店のマークがはいった車が前に止まり、清潔な白衣を着た男の店員が美しい包装紙に包んだケーケを持ち、よくマナーをわきまえて「ごめん下さい」と入ってきたの。そして私が出ますと開口一番、「マスミさんのお誕生日おめでとうございます、C菓子店ですが、お買い上げの品をお届けに参りました」これには感激しましたわ」と奥さんはKさんに報告した。さらに「ケーキにはマスミと名前がチャンと美しく入れてあり、ローソクまでそえてありましたわ」と逐一報告し、「マスミもとても喜んで「おジィチャンありがとう」を何度もくりかえしていましたわ」と結んだのです。

これを聞いたKさんは、胸にジイーンと熱いものがこみあげてくるのを禁じ得ませんでした。金額的にはたかだか5千円のケーキです。これを一つ売るだけでこのようなサービスをしたら赤字になるに決まっている。しかし、家族にとってはビッグサプライズです。このサービスがC菓子店のファンにし、さらにK氏を通じて多くの知己にこの話が伝わり、話題になれば、その効果は誠に大きいものです。(ギフト・マーケティング、 西尾正和著 ビジネス社1989)

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