7. 時代の流れ

今年で「平成」が終わり新たに「令和」の時代が始まります。「平成」はどのような時代だったかを問われて、メディアでは「グローバリズム」「デフレ経済」「ポピュリズムの台頭」「デジタル社会」の時代だと評していますが、「コスメ・マーケティング」の視点から「デジタル社会」に対応するにはどうすればよいかが大きな課題です。

「デジタル」な社会というのは、世の中のあらゆる対象が「0」と「1」のふたつの数字の組み合わせで表現できる社会のことです。つまり言い換えると「数値社会」の到来です。数値が万能で「人間不在」、「感情無視」の社会とでもいえるでしょう。このような社会では、企業はお客様を幸せにすることよりも、数値で表せる売上や利益を増やすことに傾注するようになります。学校においては情操教育よりも試験の成績を上げることに益々傾注し働く楽しみや学ぶ楽しみは二次的なものになります。つまり数字をあげることに専念する「数字至上主義」の世の中です。

もうひとつ敢えて取り上げるならば、「中庸」をゆるさない社会になることです。「0」か「1」というのは、それ以外の数字は存在しないということです。つまり二者択一の社会です。賛成か反対のどちらかを選択しなければなりません。白黒を明確にすることが要求され、中間色の灰色は受け入れられない世の中だということです。本来は中庸であることが人間関係をスムーズに運ぶ知恵の一つなのですが、これからは殺伐とした世の中になるようです。

デジタルの代表と言えば、それはパソコンやスマートフォンの存在です。それらはあっという間に私たちの生活の中に必要不可欠の機器となりました。これらは確かに便利な機器ですが、同時に人間関係に多大なる影響を与えていることを忘れてはなりません。例えばオフィス内で隣に座っている同僚に話しかけるよりもメールする人間が増えるという珍風景が各所でみられるようになりました。言葉で発するよりもキーを叩いたほうが簡単だと感じているのかもしれません。このままいくと人間同士の口頭によるコミュニケーションから、パソコンなどの電子機器を通したコミュニケーション、つまりインターフェースによることになるかもしれません。

果たして「デジタル社会」は私たちが望む社会なのか。それは人によって受け入れ方が異なるので一概にはいえませんが、「コスメ・マーケティング」に興味を持つ人間にとっては、味のない無慈悲な社会のように思えてきます。しかしながら、それほど悲観的になることはないと思っています。世の中の動きは確かに「デジタル社会」に動いていますが、一方では大きな「揺り戻し」が起きることも確実だからです。つまり「アナログ社会」へ戻る作用が働きだすことです。不思議なもので、行きすぎた流れに対して、逆の流れが必ず出現するものなのです。「デジタル化」によって便利さを享受できますが、あるレベルに到達すると、人間は一種の飽きが芽生えてきます。ノスタルジックな感情が生じて人間同士のふれあいや慰めを求めるようになります。

コスメに関していえば、ビューティアドバイザーによる親身な接客を求める声が高くなるでしょう。誰でもが使っている無機質なコスメよりも、私だけに作られた手作りのコスメに憧れ、それを持つことによって他人と差をつけられるコスメ、ぬくもりを感じるコスメに魅力を感じるようになります。

未来を予測することは簡単ではありませんが、市場はアナログ的な製品とデジタル化された製品の二極に分化することでしょう。価格的にはアナログ的が高価格でデジタル的な製品は手頃価格になるでしょう。「コスメ・マーケティング」における「接客」はアナログを具現化した重要なツールとして、特に、高級品の製品やサービスにとって必須の販売手法になります。

10年以上も前のことですが記憶に残っていることがあります。スキンケアの販売方法として「スキンアナライザー」の導入が本社から持ちかけられました。これは機器によってお客様のお肌の診断をする手法ですが、断固としてプロパー化することを反対しました。機器の存在は高級化粧品の販売には向いていない、あくまでもマニュアルによってすべきだとした戦略が正当化されたのではないかと自負しています。

「デジタル化」について、最近身近な出来事ですが、コンビニ業界に大きな問題が生じています。市場が飽和状態になってきたことも一理でしょうが、コンビニが直面している一番の問題は人手不足です。解決策として営業時間の見直しや無人店舗のテストが始まりました。

誌上に「IOT(Internet of Things)」の言葉がよく見られますが、これは全てのモノがインターネットに接続する世界です。この世界になるとまったく人間は不必要になります。コンビニにとって「デジタル化」の理想は「無人店舗」になることです。コンビニ市場は確かに「デジタル化」が進むでしょうが、一方では小売業においても「アナログ化」に対するニーズが高まってくることも間違いありません。その変化に適応した小売業が繁栄することでしょう。

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