48.「人財」から「人材」へ

1991年、日本経済はバブル経済が崩壊し、景気は不況を呈するようになりました。その後、一時景気が回復されたかに見えましたが、サブプライムローン問題を契機に世界同時不況に見舞われ、経済が立ち直らずに現在に至っています。これら一連の経済事情の変化が日本企業の経営手法に大きな改革を強いることになりました。
長い間、日本では同じ企業で生涯勤め上げる、つまり終身雇用制度を前提に人事管理制度が運用されていましたが、経済の先行きが不透明になったのでこの制度が崩れ新たに短期的な労使関係を重視する体制に変化しました。終身雇用制度は実際に契約書などに記載されていませんが、既成事実として、それこそ阿吽の呼吸で受容されていました。企業は定期的に人事異動を執行することによって中長期にわたる人材育成計画つくりあげてきたのです。そして、それが終身雇用制度を支えてきたのですが、このシステムがなくなり、場当たり的なシステムに変貌してしまいました。社員にとって企業は教育の場、勉強の場として位置づけられていました。会社が提供する一連の教育プログラムを全うしてゆけば自動的に昇格、昇進していきました。したがって、このプログラムが稼働していれば他企業から中途採用する必要はありません。事実、大手企業は基本的に「純血の社員」で構成されていました。それが、経済事情の変貌によって、最近では積極的に社外から即戦力になる人材を求めるようになりました。健康管理に例えれば東洋医療の余裕がなくなり、病巣を切除する西洋医療の考え方が前面に出て来るようになりました。社員を会社の財産としてみる、いわゆる「人財」ではなく、材料費と同じ費用項目である「人材」となってしまいました。

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