999.行列は社会的証明(19)

「ただの山でございます」事件は、一件落着したのですが、このお話には後日談があります。「ただの山でございます」事件以来、町長は、心残りだなと思っておりました。
大分県の別府に太陽の家という車いすの障害者のお世話をしている施設がありました。そこに皇太子殿下御夫妻がおいでになりました。宮内庁からは、昭和天皇と同じようにご説明するように、と連絡がありました。町長は再び、山に登り、すべての山の名前を憶えて、もうこれで安心と思っておりました。ちょうどその日は曇りで、町長も落ち着いて、皇太子殿下御夫妻に「あの山は何々山でございます。あれは何々岳でございます」とお辞儀をしながら、説明していると、皇太子殿下がこうお尋ねになりました。「町長、ただの山というのは、どの山」 町長は「ただの山でございます」の一件のことをどうしてご存知なのかと思いつつ、「ただの山、本日見えません」とやったのです。皇室では、由布院の町長は楽しい人だと評判だったようです。

0コメント

  • 1000 / 1000