50. ツーウエイ・コミュニケーション

ある計画が達成できるかできないかは、日常茶飯事にあることで、常に達成するとはかぎりません。特に重要なことは、達成できなかった時にその失敗の原因はなんであったかを評価しておくことです。失敗したからと言って、過度に自己反省をする必要はありません。失敗を将来のために生かし、2度と同じ過ちを繰り返さないことのほうが重要です。
エスティローダーに入社して5年後の1988年10月31日(月曜日)に突発事件が起きました。ちょうどこの日は人間ドッグで入院していましたが、翌日に大型新製品「アイゾーン」が発売になる予定でした。入社して翌年発売された業界初の美容液「ナイトリペア」が大成功を収め、3年後に第二弾として期待の「アイゾーン」が発売されることになりました。この画期的な新製品はアイクリームで、主成分がコイル状になってジェルクリームの中に埋め込まれています。製品コンセプト、パッケージ、使用方法、すべてがユニークで製品テストの結果も上々で、エスティローダーがスキンケアの権威として更に大飛躍する機会になるはずだと信じられていました。
何事も計画通りにいかないと知っていましたが、まさか、発売日の前日、人間ドッグ先に社長から「会社都合によって発売を中止するので、店頭在庫を回収せよ」と電話があるとは信じられませんでした。人間ドックをキャンセルして夜9時ごろオフィスに戻り早速緊急会議を招集しました。なにが「会社都合」なのか、理由が不明の中で、ともかく即座に店頭から在庫品を回収しなければなりません。
翌日から発売延期を徹底するために主要カウンターを訪店したところ、現場はパニック状態でした。それだけこの大型新製品に期待するものが大きかったのです。翌日になると発売中止の原因がわかったので、回収の応酬マニュアルを作成し全カウンターに送付しました。しかし、訪店してわかったのですが、信じられないことに、情報が現場まで通じていなかったのです。改めてコミュニケーションの難しさを感じました。
私がモットーとする「災いを転じて福となす」をもって、営業現場との間でツーウエイ・コミュニケーションが構築できれば、ラインとスタッフが同じ方向に動くようになると考えました。ツーウエイ・コミュニケーションの有無はビジネスの成否に関わる重要課題です。どうすればよいか考えなけばなりません。

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