89. 市民権を得る

百貨店で販売されている製品は一見華やかに見えますが、裏では熾烈な競争が行われています。もし、低迷しているブランドがあれば売場移動を余儀なくされ、または強制撤退の勧告もあります。従って、生き残る為には常に前年比をクリアし成長路線を歩まねばなりません。
入社当時のエスティローダーは売上低迷のため百貨店の店内シェアはトップ10にも入っていない状態でした。ロケーション・スペースの改善、それには店内シェアのアップが優先課題です。百貨店内で「市民権」を得るためには上代価格で月商500万円以上の売上げがなくてはなりません。市民権のないブランドは「単なる雑魚ブランド」として扱われ、フロアーのバイヤーからは無視され意見さえも聞いてくれません。当然のことながら、百貨店側からの協力は全く不可能です。さて、店内シェアをアップしようにも、低迷の問題がどこにあるのか、またどのような施策が効果あるのかがわかりません。まずは、なんとしても500万円を達成し現状を打破しなければならないと焦るだけでした。
世界では一流ブランドとされる「エスティローダー」がどうして日本では苦戦しているのだろうか、マーケティング戦略のどこが問題なのか、問題点を早急に発見し手を打たなくてはなりません。まずは5Pを検討してみました。それぞれすべての戦略に大きな問題がありましたが、緊急性と経費効率性の面から導き出された結論は、5番目の「People」、現場のビューティアドバイザーに焦点をあわせることにしました。当時の社内の人間関係はギクシャクし、相互に自己啓発する様子がない無気力状態でした。ブランドの敵は外部でなく内部にあるような状態で、問題解決には社員の再教育が必要だと痛切に感じました。自己啓発、チームワーク、労働意欲などを向上させるにはどうすればよいか、大きな挑戦でした。

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