146.「基本と原則」を守らなかった大塚家具

経営の神様と呼ばれるピーター・ドラッカーの言葉に「基本と原則に則っていないものは必ず破綻する」とあります。この言葉の通り、基本と原則が理解されていなかったために破綻してしまった実例が数多くあります。2016年に世上を騒がしたニュースに大塚家具の内紛がありましたが、内紛の原因を「基本と原則」の観点からコメントします。
報道によると、会長である創業者が娘の現社長を解任したことが事件の発端だったが、その原因が経営方針を巡る内部対立にありました。創業者である会長は、顧客の会員制度を導入し飛躍の礎を築いたが、ライフスタイルや競合環境の変化の波に乗り切れず低迷が続いていた。そのために、娘が社長を引き継ぎ会員の囲い込み戦略から脱皮し、新しい顧客の獲得に力をいれる戦略に変更しました。店舗もカジュアルスタイルに変更し入りやすい店舗デザインにするなどの手を打ったが成果が上がらなかった。既存会員も大切にする戦略だったが、具体策を講じることをしなかったので、業績が低迷し回復の兆しがみえなくなった。この状況を憂えて、一度前線から退いた父親である前会長が社長職に復帰しようとしたことが内紛の原因となりました。結果は、父親は大塚家具から完全に退き新たに「匠」ブランドを立ち上げ、旧来の大塚家具は娘が引き継ぐことになりました。
大塚家具の問題は家族内のスキャンダルではなく、マーケティング戦略の変更の問題だと考えられます。大塚家具の「基本と原則」である正価主義、顧客サービス・高級家具から脱し、カジュアル層にターゲットを広げる戦略に転換したのだが、果たしてこの戦略は正しかったのかどうか疑問である。個人的には、創業者である会長が返り咲き、創業時の戦略を再度徹底、しかし戦線を縮小し利益率を優先する経営戦略に徹し、娘さんは新たなブランドを独自に立ち上げるべきだと思います。

0コメント

  • 1000 / 1000