230.小さな心くばりを体験(1)

アメリカ・アリゾナ州のフェニックス近郊にある大学院に留学した時の話ですが、空港からタクシーでキャンパス内の寄宿舎に着き、荷物をほどきながら「さて、これからどうしよう」と不安と緊張、そして少しの期待で学生生活がスタートしました。部屋は2人部屋で、トイレ、シャワールーム、リビングルームがルームメイトと共有でした。それというのも太平洋戦争中、学校の施設はパイロットの訓練所として使用されていたからです。そのために設備はすべて軍隊様式で、驚くことにトイレやシャワールームにはドアが無く、ベッドルームも仕切り板ひとつでした。まったくプライバシィのない状況で、2~3日経つと、ルームメイトになるトッド・ストアが突然現れ部屋に入ってくるなり、じろっと私を見て荷物をほどくことなく出て行きました。声をかける暇もありません。2時間ほどして戻ってきましたが、なにか意にそぐわないことがあったようでした。後でわかったことですが、彼は学校の寄宿舎担当者にルームメイトを変えてほしいと要望に行ったそうで、彼はベトナム戦争に士官として参加し戦争終了後この大学院に入学してきたのです。ベトナム人を相手に生死をさまよった体験からアジア人と同居することなど予想外だったのでしょう。しかし、同居が始まりお互いに会話が進むとだんだんと打ち解けてきました。

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