266.伝統的な日本流の商法、越後屋
日本人のサービス精神の底流には「お客様をもてなす心」があったはずです。単に日本ではそれが「マーケティング論」に集大成されていなかっただけです。江戸時代、越後屋三井呉服店(現在の百貨店三越の前身)の創業者が三井高利である話は有名ですが、越後屋は現金で正価販売、不動在庫は安く売り払い在庫をできるだけ持たない、いわゆる切り売りなどを開発し、当時としては画期的商法を編み出しました。この商法はまさしく「お客様の立場に立った商法」でした。
越後屋はある種の流通革命を起こしたのです。それまでは呉服の購入はほとんどが掛け売りで後払い、価格は高く呉服は高価な商品で一部の人しか買うことができず、庶民にとっては新品の呉服を購入するのは高根の花でほとんど古着を買うしかありませんでした。それを越後屋は庶民でも気軽に買えるようにしました。また、店内に入ってきたお客様には茶菓子などでもてなしたそうで顧客サービスがモットーでした。消費者のニーズを掘り起し市場の開発につとめた越後屋商法、これぞまさしくマーケティングの極意でした。しかし、残念ながらこの商法が暗黙知としては存在していたが形式知として伝承されていなかったのです。
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